ウユニでの悲劇
"Salar de Uyuni"「ウユニ塩湖」という名前は、
ここで、Chichiさんについて。彼とは日本で知り合い、私が 先住民の文化に興味があると言ったら、ぜひボリビアに来るといい 、と誘ってくれたのだ。正直、あまり良く知らないおじさんと旅行 するのは不安だったが、蓋を開けてみれば、本当に良い人だった。 コメディアンというのも何か怪しいな、と思っていたのだが、彼の 知名度は街を一緒に歩けばすぐに分かった。3歩進むと、誰かしら が「Chichi !!」といって写真を求めてくる。日本でいう出川みたいな感じだ ろうか。というわけで、私も一緒に芸能人気分を少し味わったわけ だ。
話をUyuniに戻すと、予想通り、現地は日本人でいっぱいだっ た。偶然、高校時代の友達に出くわした時は、 空いた口が塞がらなかった。
ウユニ塩湖はその名の通り、塩で出来た湖で、湖全体が大きな鏡の ようになっている。中心に行くには100キロほどバンに乗って走 る必要があるため、現地のガイド Iván に案内してもらい、遂に絶景に辿り着くことができた。360度、 どこを見ても青い空と白い雲が広がり、それが湖に反射するためど ちらが上で、どちらが下かもわからなくなる。 天国が本当にあるのなら、きっとこんなところなんだろう。
と、ここまで読んでもらうと、いかにも絶景を満喫してきたように 感じるだろう。しかし実はこの時、 私は景色なんてほとんど見ることができなかった。というのも、 ウユニのど真ん中、トイレに行きたくなっていたのだ。 じっと耐えていたが、もう我慢の限界。遂にIvá n に "Quiero ir al baño!! Baño, baño, porfavor" と叫んだ。いったんトイレのあるところまで引き上げてくれると踏 んでのことだ。ところが彼は、
「今ある唯一の方法は、この車で僕達の見えないところまで行くこ とだけだよ」
というのだ。車なんて運転したことないし、ましてやIvánの車 はマニュアルだ。
しかし、もう我慢の限界は超えていたし、どこに暴走したとしても ぶつかるものや、ひく人もいなかったので、「どうにでもなれ!! !」と車を走らせた。
ウユニでの大暴走は、トイレに行きたかったことを一瞬忘れさせる ほど、爽快で、Iván とChichiが点になってしまうと、 まるで自分一人がこの世界にいるかのように感じた。こんな気持ち 、二度と味わう事はできないだろう。
という綺麗な話も束の間、私は無事、かの有名なウユニ塩湖のど真 ん中で用を足すことができた。そして、ただただ恥ずかしさと、世 界のみんなに対する申し訳無さを感じながら、帰路についた。
Salarには世界中から観光客がやってくる